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これでこの夢は3回目だな。

お父さんとお母さんが小川の向こうにいる。2度目の夢を覚えてはいるけど何を頑張ればいいのかは分からないまま。

慣れてしまった私は夢の中だけど冷静だった。



『桜音羽は本当にお兄ちゃんが好きねぇ。』


『お嫁さんになりたいんだぁ⋯!』


『お父さんは反対だぞ!そんな、まだ5歳の女の子が結婚なんて......』



これは⋯、5歳の頃の私?お母さん達は川の向こうにいるのに私の頭の中には古い記憶が流れ込んできた。



『桜音羽ね、お兄ちゃん大好き!だからいいでしょ?パパ?』



頭を抱えているお父さんの顔を私は面白がってた。だけど今の年齢になってみると違う意味が伝わってきた。そしてその言葉の意味も分かるようになった。


『いや、いやいやいや、兄弟はだめだよ。お兄ちゃんはいつまでもお兄ちゃんでしかないから。』


慌てふためいているお父さんが面白くてそれに結婚にも憧れていたからよくお父さんに交渉してたっけ。


『でもな、桜音羽。将来絶対にこの人しかいないって人に出会える日が来るから。それまでは自分磨きを頑張らなくちゃな?その人の隣にいつまでもいられるように自信をつけることが大事なんだ。』


『⋯つまんないの。』


意味を理解できないほど幼かった私は話に飽きていた。


『大丈夫だよ。桜音羽はそのままで可愛いからお兄ちゃんがいつまでも守るんだし。』


『それ言っちゃうと意味ないだろ⋯!お父さんだっていつまでも桜音羽を大事にするぞ!』


『ふふふふ⋯!ほんと、似た者親子ねぇ。パパとお兄ちゃんたら。』



噛み合ってない会話を聞くとお母さんはいつも涙を流して笑っていたなぁ。


私は自分が思っているよりずっと家族に大切にされていたんだと気づいた。


『お父さんの言っていることも間違っては無いと思うの。でもお母さんはこう思うな。』


『桜音羽を大切にしてくれる人を大切にすることが1番よ。』



⋯どうして忘れてたんだろう。
お母さん達はこの言葉を思い出して欲しかったのかな。

咄嗟に両親を見ると微笑んでいる。

私、もう少し頑張ってみるよ。

碧音さんを想いながら目を閉じると夢から覚めることが出来た。