「誰ですか?私はあなたのことなんて知りません。不愉快です。帰ってください。」

一息で全てを言ってしまうと後悔が募って言った。それでも碧音さんの為にならない私のわがままは絶対に口にしちゃいけない。

今の私は突き放す言葉しか言えない。


「····俺の事、忘れたの?」

「·····」


無言を貫くと碧音さんは何も言わずに出ていった。これでいい。碧音さんの未来のために私ができることはこれしかないんだから。

なのに行かないで欲しい。今すぐ戻ってきて欲しい。また隣で笑い合いたい。走り出せるのならきっと今すぐにでも追いかけてしまってた。涙が溢れてくる。
私は病気になってからどれだけ涙を流しただろう。


「桜音羽····?」

次に扉を開けてきたのは戻ってきた碧音さんでは無い。お兄ちゃんだ。いつもなら嬉しかったはずなのに今は泣いている姿を見られたくなかった。


「強いね、桜音羽は。いつの間にこんなに強くなっちゃったの?ごめん、変わってあげられなくてごめん。約束したのに、守ってやれてないね。俺は。」


お兄ちゃんは悔しいのか私を強く抱きしめた。そんなこと思わなくていいのに。泣いちゃいけないのに、お兄ちゃんを悲しませているくせに私が泣いていいわけが無い。
それなのに出てくる涙は止まってくれなかった。



━━━━━━━━━━━━━

昨日はあれから誰も来ることは無かった。
お兄ちゃんは面会時間ギリギリまでいてくれたけどこれから数日は地方に行くことになってて来れないと言っていた。

少し安心してしまった。泣き顔ばかりを見せたくない。お兄ちゃんが辛くなるだけだから。




「おはよう。 」



「どうして····」