桜音羽目線


·····今日の空はご機嫌斜めだなぁ。
青い空が雲に覆われてこっちまで憂鬱になる。


あの日、朝陽さんのプロポーズを断った。

理由なんて山ほどある。


それでも病気の私を知っていてもそう言ってくれる朝陽さんには感謝の気持ちばかり募った。


けどあの日以降、病院に来てくれることはなくなってしまった。
朝陽さんはいつも優しくしてくれた。その想いを断ったんだから当たり前なのに、少し寂しい。



━━コン━コン━━


扉を叩く音がして私はベッドからゆっくりと起き上がった。看護師さんはさっき巡回に来ていたし、お兄ちゃんは今日は来れないって連絡がきていた。


他には誰も·····、




「桜音羽。」



誰が来たか理解する頃には暖かく優しい匂いに包まれていた。無意識に私はその背中に手を伸ばしてしまっている。


「ど···して、いるんですか?」


震える声で何とか口にすると碧音さんは信じられない言葉を言った。


「桜音羽、好きだ。」


なんでいるのか、どうして抱きしめられてるのかわからない。
私の頭には言葉だけが響いてきた。


好き?突然で全く理解できない。今まで言われたことは無かったし、あのまま消えれば無かったことに出来るかもしれないと思ってた。

碧音さんは裏切った私を抱きしめて何でそんなことを言うんだろう。

今すぐこの広い背中を抱きしめたい。それでも駄目だと思い勢いよく碧音さんの胸を押して離した。

目を合わせてはダメ。碧音さんが話す時間を与えちゃダメだ。