最後に確かめるように言われて私は目線を逸らしてお願いした。

朝陽さんが帰ったあと消灯前にスマホの連絡先を見た。そこに碧音さんの名前はなかった。

自分からお願いしたくせに悲しかった。もう会えない。もう····━━━━━━━━━━━━━



それから数週間、年を越しておめでたい雰囲気がテレビから伝わってくる。
私はまだ入院中でパリパリとしているベットの上。


カラフルBOYSは年末年始テレビにずっと出演していた。だから私は静かに年を越した。

病院だから仕方がない。そんなことを考えながら。

奏さんが登場すると思わずリモコンの電源ボタンを押して消してしまう。そんな繰り返し。

三が日が過ぎるとお兄ちゃんはよく来てくれた。朝陽さんも。くだらない話をしては仕事に行ったり、帰る時間になってしまったり。


誰かが来てくれることは素直に嬉しかった。ひとりで病室にいると真っ黒ななにかに心が飲み込まれてしまうから。




「桜音羽っちってさ、小さい頃に夢とかなかったの?」


この日は一人でやってきた朝陽さんはいつものようにベットの横にある椅子に座ってしばらくするとニコッと笑って唐突な質問をした。理由は分からなかったけど少し考えてから私は答えた。



「お兄ちゃんには内緒にしてくださいね?
小さい頃、絵本の中のお姫様にすごく憧れててふわふわのウエディングドレスを着て、教会で世界一大好きな人と式を挙げることを夢見てました。結婚したらお姫様になれると思ってたんですかね?(笑)

·····そんな小さな幼い夢しか考えたこと無かったんだなぁ。」





あやふやなほど小さい頃の記憶。
だけど女の子ならきっと誰でも憧れる夢。