「だって前に舞台でキスシーンがあるって言ったらめちゃくちゃ嫌がってたから(笑)」



そんなこともあったなぁ。
お兄ちゃんに好きな人がいるなんて絶対に認めたくない。
理由はお兄ちゃんにとっての一番が私じゃなくなっちゃうから。


だけど今は違う。
好きな人がいるんならその人と幸せになって欲しい。
そうすれば私は1番じゃなくなる。
世界で一番大切な人がいなくなってしまう苦しみを私達は知っている。




·····あんな思いはもうしてほしくないなぁ。



「好きなの?この女優さん。」



私はお兄ちゃんの質問には答えずもう一度質問した。



「この人は俳優として尊敬はするけど恋愛感情はないよ。
それより桜音羽、何かあった?」



しまった。明日の夜までは内緒にしないといけないのに。



「ううん。なんでもない!」