私と碧音さんは嘘の関係。私は碧音さんに秘密を話さないし、碧音さんだって本気なわけない····ずっとそう思いたかった。



「でも、これからは努力をする。君に信用して貰えるように。その時は君の名前を呼ばせて。」


力強く、確実にそう言った。
これまで名前を呼ばなかったのには理由があったんだ。
どうしよう。すごく嬉しいことのはずのに息ができないほど苦しい。胸が締め付けられる。

碧音さんは嘘をついていなかった。ずっと真っ直ぐ伝えてくれてたんだ。なのに私だけが嘘をついて最後には傷つける。沙也加さんよりよっぽど酷いことをしてるんだ。

汗が止まらなくなって返事を忘れていると規則正しい呼吸が聞こえてきた。もう寝ちゃったんだ。私が使っていた毛布を碧音さんへ掛けた。

呼吸が上手く出来なくて汗もどんどん溢れてくる。1回離れよう。そう思ってリビングへ移動した。落ち着いてしっかり呼吸をしなくちゃ。



「あれ、どしたの?」


真っ暗で何も見えないリビングで後ろから声がした。驚いて座り込んでしまった私を見て謝りながら手を差し出してくれた速水さん。そしてオレンジの淡い光をつけてくれた。


「眠れない?」

「····っ、はい。」


必死に呼吸を整えながら答えると水を注いでくれた。


「こんな事聞くのもどうかと思うんだけど桜音羽ちゃんって体弱かったりするの?」

「····どうしてですか?」

「前も過呼吸になってたし、顔色が良くないこと多いからさ。」


コンサートの時に助けて貰って上手く誤魔化したつもりだったけどあんなふうになったら誰でも驚くよね。