挑発すると明らかに動揺していってこれ以上何も出来ないようにナイフを使わせた。
結果髪は短くなったけどこれから先私達には近づかない気がする。

こんな事件があればプライドの高い彼女は同じ仕事には戻ってこないだろう。
自分がこんなに冷静に物事を見るなんて思ってもいなかった。

でもどうしても譲りたくなかった。
彼女が碧音さんを手に入れればもう会えなくなるから。何より碧音さんは、人は自由だからこそ輝くんだ。


━━━コンコン━━━


「大丈夫?のぼせてない?」


碧音さんの声だ。

「すみません·····!すぐに出ます!」

「あ、いや、そういう意味じゃ」


お風呂を借りといて長風呂なんて失礼すぎる。慌ててバスタブから出てドアノブに手をかけた時、碧音さんが止めた。


「待って!すぐ脱衣所から出るから!」


そうだった····、扉越しに碧音さんが話しかけてきたんだから開ければ·····、お風呂で温まったからなのか羞恥心からか頭が急激に熱くなる。


「ゆっくり出てきていいからね。」


それから脱衣所の扉が閉まる音がして私は顔だけだししっかり確認してから服を着た。
荷物を取りに戻れたのは良かった。服もだけど予備の薬を持ってないと予定外の外出は大変。病院に行く事に薬が増えていっている気がする。飲んで効果があるかと言われれば確実では無い。それでも薬を飲まないともっと大変なことになる。

鞄は脱衣所まで持ってきてるから薬と水筒を出し飲んだ。さすがに奏の皆さんにバレるのは避けたい。