話し方はいつもと変わらないが明らかに怒りが籠ってる。こいつは何を考えてんのかよくわかんねぇ。


「お待たせしました·····!」


スピーカーのまま会話してると川島がでかい声でやばいことを言い出した。


『桜音羽っち!今すぐそこから逃げないと怖い人·····━━プツ━━


反射的に俺は通話を切ってしまった。嫌われる要素しかないのにこれ以上不安要素を増やしてたまるか。


「ごめん、川島からの電話急用じゃ悪いと思って伊月が通話ボタン押した。」

「問題は無いですけど····用事じゃなさそうでしたか?」

「全然、全く内容のない話だった。」


俺の口からは嘘しか出ないらしい。なのに簡単に信じてしまうんだ。


「碧音のこと信用すんなよ〜何されるかわかんねぇから(笑)」


さっきから伊月の悪ふざけが止まらない。いい加減殴ってでもやめせようと思った時、心に重くのしかかる言葉が横からやってきた。



「嘘でも傷つかないので大丈夫です。」


「・・・・・あ、そうな、の?」


メンバーは予想外の言葉に困惑していた。もちろん俺だって。この前は嘘に見えないなんて言ってたけど結局は俺の気持ちは届いてないってことだよな。

沙也加へ言ってくれた言葉は素直に嬉しかった。こんな俺でも信じてくれるんだと。
少し前の俺ならどうせ口だけ信じるとか言って信じてくれてないって被害者ぶってたんだろうな。