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碧音目線


休憩になり楽屋でメンバーに話しかけられるのも面倒くさくて廊下を歩いてるとあの子の声が聞こえた。しかも沙也加が俺の事を無価値とか言ってる。



足が動くことをやめてしまった。
別に沙也加の言ってることに驚いた訳では無い。あいつの考えなんて所詮周りと一緒だ。俺だって同じように感じる。いくら頑張ったって俺は父親を越えられない。·····何より小戸森拓也なんて俺の父親じゃない。


力をなくして壁に背中を預けるとあの子の力強い声が聞こえた。


〝信じる〟


その言葉は俺の胸に優しく溶け込んだ。
無理だ。俺は隠すことが出来ない。あの子への感情を無くしたくはない。今すぐにでも伝えてしまいたかった。



「桜音羽っち?なにやってんの?早く戻ろう。 」


川島は俺に気づいたようだがそのまま俺の存在に気づいていない彼女を連れて行ってしまった。沙也加だけがその場に残っていた。
息を吐いて沙也加の前に姿を現した。


「あら?聞いてたの?」

「まぁな。」

「あなたにとっても私は最高の恋人《アクセサリー》でしょう?
2年前まで有名なモデルで表舞台からは消えたけどそろそろ女優でもやろうと思ってるわ。今は監督たちに取り入るためにスタッフとして愛嬌を振りまいてるの。人気アイドルと有名モデルなんて最高の組み合わせじゃない?」