｢桜音羽っちはやっぱ好きなの？｣

｢何をですか？｣

｢んー·····お兄ちゃん♡｣


急にいつもの朝陽さんの表情でそんなことを言った。少し口元が緩む。


｢もちろんです。｣

｢じゃあー、碧音さんは？｣

｢え·····？｣



どうしてそんな質問をするのか私にはさっぱり分からなかった。好きだったとして朝陽さんには関係がないと思うし。


｢多分·····、好きだと思います。｣


口にしただけで身体中が熱くなる。やっぱり口にするんじゃなかった。恥ずかしすぎる。



｢そ·····っか。初恋だったり？ ｣

｢かもしれませんね。｣



初めて異性として好きになった相手。だけど絶対に伝えることは無い。私は少しの間碧音さんと楽しく過ごせればそれでいい。



｢桜音羽っちの恋、応援する！｣

｢気持ちを伝える気は無いですよ·····、｣

｢どうして？病気だからって諦めなきゃいけないことなんてあるわけないよ。桜音羽っちは自分の欲求をもっと全面に出すべき！｣



朝陽さんの言葉はいつも真っ直ぐ私の心に届く。私は初めて自分のこの気持ちを声に出せた。誰かを好きになるっていい事なんだ。


｢ずっと引っかかってたことがあって 碧音さんが『もっとわがままでいい』って言ってくれたんです。ときどきその言葉を思い出してお兄ちゃんにわがままを言ってみたりしてるんですけど、どうしても碧音さんに直接は言えなくて·····｣