碧音さんが私以外の女性と話しているのは沙也加さんしか知らない。けどあの人と会った時、碧音さんはいい気分ではなさそうだった。
他の女性と接しているのは見たことがない。みんなに優しいのかな。
人との関わりが少ない私はそんな些細な優しさで勘違いしてしまいそうになる。
だからはっきりと言って欲しい。


『みんなと変わらない。』『これが普通。』って。


「わかんない?」

「そんなに優しくされると勘違いしちゃいます。」


つい口から出てしまった。
耳まで熱いのがわかっしまう。
なんて恥ずかしいことを言っちゃったんだろう。




「勘違いじゃないよ。」



「え·····「嘘に見える?」



とっさにもう一回隣を見ると顔が真っ赤な碧音さん。きっと同じくらい私も同じくらい赤いんだとわかってしまう。
女性関係の噂が耐えなくて俳優として活躍している人だ。
これも演技。表情なんてきっといくらでも作れちゃう。


今までどれだけの人にこんな顔をしてきたんだろう。絶対に嘘だ。でも私は嘘がいいと思った。
初めて知ったこの感情が“恋”というものなら世界があまりにも残酷に感じてしまうから。



あと数ヶ月、数週間、明日、もしかすると今この瞬間に私はいなくなってしまうかもしれない。