碧音目線

━━━━━━━━━━━
昨日、俺はテレビ局の通路を一人で歩いてたら転んで人に飲み物をかけてしまった。
急いで楽屋にタオルを取りに戻ってズボンの濡れている部分を拭いたのに落ちなくて、怒らせてしまったと思った。

結局怒っては無いみたいだったけど。
笑顔が苦手とも言っていた。
失礼だろうけど顔はあまり見てなくて話しかけられたから答えるとまじまじと顔を覗かれ俺はその時やっと相手の顔を見た。


そこにいたのは少女のような幼さの残る顔立ちの人だった。1度見かけたことがある。
そこで俺は自己紹介をしてないことに気づく。


まぁ、女の人だし反応は予想できるからあんまり言いたくないんだけど自分がやらかしたんだし、仕方ない。
だけど彼女の反応は違った。
俺に気づかなかったことを謝られた。
その時なんだか仕事だからと張っていた糸が切れた気がした。


数日前のことも気になって何となく、質問した。そして何となく、笑顔を見たいと思った。
兄のことで悩んでると聞いて助言をしたかった。けど俺の頭じゃいい言葉なんて思い浮かばない。

だから時間稼ぎに楽屋に連れていったらパーテーション越しに笑い声が聞こえた。
親のことを思い出したんだろうか。
彼女から聞いた母親の話は過去形だった。