いつもと違うお兄ちゃんが少し怖くて咄嗟に手を握りしめた。



「·····気にしなくていいよ。
帰ろっか。」



普段通り微笑んでる。
私には怒ってないのかな。
行きたいって言ったのは私なのに。



「今日は楽しかったです。
ありがとうございました。」



奏の皆さんにそういうとお兄ちゃんもお辞儀をしていた。尊敬してる先輩って言ってたのにあんな口の利き方して大丈夫だったのかな。
それから家に帰るまで一言も喋らなかった。やっぱり怒ってる?



「“今”やりたいことは見つかった?桜音羽のやりたいことは碧音さん達といること?」



お兄ちゃんは椅子に座ると私を真っ直ぐに見てきた。



「やりたいことは違うんだけどね、小戸森さん達と今日過ごして、····すごく、楽しかった。また会ってもいいかな·····?」



難しい顔をしている。
どうしてダメなんだろう。



「桜音羽のことが大切だからあまり·····会ってほしくはない。」



不安そうなお兄ちゃん。



「理由を教えてほしい。」


「ごめん·····少し時間をもらいたい。」



お兄ちゃんは部屋へ戻ってしまった。
いつもなら私の意思を尊重して見守ってくれるお兄ちゃん。


だけど今回は違った。
思えば私たち兄弟がこんなふうになるの初めてかもしれない━━━━━━·····。