何とか作業を終えて部室に戻って来た。

みんなでのんきにカップケーキを食べていると、サクヤさんが話を始めた。

真面目な顔をしているから、部活動に関することだとは思う。

『えー。ひとつみんなに言っておきたいことがあって。報告っつーか。』

『なに?』

『なんですか?』

『…。』

シュンだけがカップケーキに夢中で、サクヤさんの話には反応しない。

今、3つ目のケーキを手に取った。

それを分かっているからか、サクヤさんは話を続ける。

『今って4月の後半だろ?本来なら新入生を部活の勧誘にいかないといけない。でも、今年はやってないよな。』

『そういえば、そうだねー。』

『ほんとだ!勧誘しないんですか?部員少ないし、増えた方が良いと思う!』

私もカップケーキをつまみながら、尋ねた。

それにしても、これ美味しいな。

どこの店のやつだろ?

『このタイミングでいうのも変かもな。でも、あんまり先延ばしのするのもってことでさ。もう言ってしまうと、今年でこの部活は無くなってしまう予定。』

『えっ?そうなの?』

『えっ?え…。ええー!なんで?なんでですか?わたしが作業をダルそうにしたからですか?』

『…!』

全員が驚いて、この突然過ぎる発言をした部長の方を見た。

流石にカップケーキどころじゃない。

『ごめん。ほんとは一昨年の時点で分かってはいたんだけどさ。そもそも、本来なら部員が5人いない時点で部ではねーし。』

『確かに。そう言われるとそうね。』

『そうですね…。』

部員は最低でも5人、顧問の先生が1人いれば、部活動として認めてもらえる。

たしか、学校のルールはそんな感じだった。

詳しくはないけどね。

新しい部活動を作ろうとするくらい、熱心な人は中々いない。

私の周りにもいない。

そんなルールはすっかり忘れていた。

『じゃあ逆に、なんで園芸部は残ってるのって話なんだけどさ。一応、昨年度は一瞬だけでも5人以上いたから。去年は問題ない。』

『そうね。』

『はい…。』

『ただ、一昨年の時点で3年後に園芸部が廃部になるってことだけは決まっていたんだ。仮に、昨年の部員が100人いたとしても。今年の部員が1人でも。廃部という事実と時期は覆らないんだって。』

『…。』

『ははっ。これでも部が無くならないように色々とやったんだけどな。』

みんな黙ってサクヤさんの話を聞いていた。

あまりにも突然の話だったから、何を言っていいのか分からない。

『代わりに用務員を増やすらしい。廃部になる詳しい理由は知らね。やれ、そもそも顧問がいないとか。部員が集まらないからとか。色々と説明は受けたけど。』

『あー、なるほどね。色々と繋がったわ。』

『えっ?何も繋がらないんですけど。』

ノゾミ先輩だけが妙に納得をしてる。

もしかしたら、この人達が入部したタイミングで、何かあったのかもしれない。

『長々とごめんな。ま、俺の話は以上ってことで。言いたいことは、だから新入生は勧誘しないよってこと。残り1年もこのメンツでよろしくぅ!』

『オッケー。』

『あぁ。』

『えっ?』

私以外の2人はもう納得した様子だ。

ノゾミ先輩はともかく、シュンは絶対何も知らないくせに、納得してる感じはなんなの?

あ、興味ないだけか。

『な、何とかならないんですか…?せっかく入部したし、廃部っていうのは寂しい気がします。』

『そう言って貰えると、ヤヨイちゃんのこと誘って良かったなって心から思うよ。でもな。どーしよーもないんだわ。』

サクヤさんは無表情のまま言った。

完全に諦めがついている、そんな感じだ。

『どの道、あたしらは今年で卒業だし。ヤヨイちゃんが3年生になる時に部がないのは、申し訳ないんだけどさ。』

『いやいや、いいんです!もう先輩達が足掻くだけ足掻いてなくなるなら、どうしようもないです!だから、大丈夫です!』

ノゾミ先輩の申し訳なさそうな顔を見て、慌ててそう言った。

先輩にそんな顔して欲しい訳じゃないから。

でも、悲しいことばかり続かないようにしたくれるのが、私達の部長だ。

『つーわけで。部は無くなるけど、合宿はやろうと思う!最初で最後の合宿だ!』

『…は?』

『えっ?水やりの練習とかするんですか?それとも、体力作りの為に土を運ぶとか…?』

『ちげーっての!合宿の内容は旅行だよ!最後の最後にそーいうの、やってもおもしろいかなって。』

サクヤさんから素敵な提案がされた。

思い出作りはしたいなって、私も思っていた。

みんなも賛成の様子だ。

『なるほどね。いいんじゃない?』

『なるほど!楽しそうですね!シュンもそう思うよね?』

『あぁ。』

『んま、合宿というよりは完全にプライベートな旅行だな。5月になったらやろうと思うから、予定空けといてな!』