作業を終えて部室に戻って来た。

もうこの後はダラダラして帰るだけだから、先に制服には着替えておいた。

シュンとノゾミ先輩は作業中のようで、まだ部屋にはいなかった。

私は机の上に上半身ごと倒れ込んだ。

めちゃくちゃ疲れた。

へとへとだ。

『お疲れ、ヤヨイちゃん。はい、これクッキーと紅茶。』

『はぁはぁ…。クッ…キィ…。』

『こえーって!』

そう言ってサクヤさんが、クッキーの箱と紅茶が入ったマグカップを持ってきてくれた。

それらを受け取り、夢中になって口に放り込んだ。

紅茶の香りとクッキーの甘さが全身に染み渡り、落ち着く。

4月の夕方はまだ寒いから、温かい飲み物は本当にありがたい。

色々とおかしいけど、やっぱりこの人、良い先輩だ…。

『あぁ…。美味しい…。』

『よかった。そのクッキー、髪の毛とかは入ってなかったんだな。』

とんでもないことを口にして、サクヤさんが私の前方にあるイスに座った。

驚いたから、飛び上がってしまった。

『えっ?これ、知らん女の子の方のクッキーなんですかっ?ダメですよ!これはちゃんとサクヤさんが食べないと!女の子の気持ち、こもってるんだから!』

『嘘だっての!それはオレが持ってきたやつ。結構、高級なやつなんだぜ?』

『はあ?さいあく!また騙された!…でも美味しいから許しましょう。』

『ははっ。そうして。』

軽く笑いながらサクヤさんは、女の子から貰った方のクッキーを口に入れた。

その様子を見て、私はもう一度イスに座った。

良い先輩だと思ったらこれだ。

隙あらば、私にしょうもない意地悪をしてくる。

でも…。

その割には、サクヤさんの顔は信じられないほど安らかな表情をしている。

人にもよるかもだけど、イタズラが成功した後ってもっと笑ったりしたくなるものな気もする。

そんなことを考えていると、部室の扉が開いた。

作業を終えた2人が戻って来た。

『はぁ…。疲れた…。サクヤー。あたしにも紅茶入れて…。』

『お疲れ、ノゾミちゃん。シュンくんも何か飲む?』

『…ココア。』

『オッケー。紅茶とココアね。』

そう言ってサクヤさんは、飲み物を用意する為、立ち上がった。