部員全員がそろって席に着いたので、サクヤさんが話を始めた。

『そんじゃ始めますか。えー、いつも通りだね。南側花壇の整備、東側の畑の整備だね。西側の方はスズキさんがやってくれたから、今日は大丈夫。』

スズキさんはこの学校の用務員の方だ。

温厚なおじさんで、植物に関する様々な知識を、優しく教えてくれる。

一応、この園芸部には作業を全く手伝ってくれない顧問の先生がいる。

顧問の先生って呼びたいのは、間違いなくスズキさんだ。

『はい!』

『りょーかい。』

『…。』

『んで。割り振りなんだけど、西側がオレとヤヨイちゃん。東側はシュンくんとノゾミちゃんね。よろ。』

『…ちょ、まてよ。』

シュンが口を開いた。

その様子を見て、ノゾミ先輩が先に宥めた。

『まぁまぁ。この前はヤヨイちゃんと一緒にやったでしょ?』

『…そっスね。』

『それに今日は畑の作業だからさ。ヒョロガリのサクヤより、シュンくんの方が助かる。あたしの手伝いしてくれる?』

『それもそっスね。』

シュンはあっさり納得した。

ノゾミ先輩はいつも上手に場を回してくれる。

先輩がいなかったら、私も退部してしまっていたかもしれない。

サクヤさんはめちゃくちゃな人だけど、部活に関してはちゃんと考えている。

今日の畑の作業は力仕事だから、パワフルなシュンがやった方が良い。

私と一緒に作業をする時は、私に何か教えたいことがある場合のみだ。

『ひどっ。ま、そういうことだから。よろしくぅ!作業が終わったらティータイムだ!今日のお菓子はオレが持ってきたクッキーと、知らん女の子からもらったクッキーだ!』

『やった!クッキーモンスター!』

『あのさ、サクヤ。知らん女の子のクッキーは怖いんだけど。あと、ヤヨイちゃんの掛け声はわけ分かんないし…。』

ノゾミ先輩が困った顔をしている。

先代の部長がなぜか、電気ケトルと小型の冷蔵庫を置いていってくれた。

そして部屋には水道もある。

そのおかげで、紅茶やコーヒーが飲み放題なのはありがたい。

飲み物のラインナップは、紅茶、ほうじ茶、コーヒー、ココア。(アイスも対応可能。)

飲み物の葉っぱや粉は、サクヤさんが置いてくれているやつだけど。

お菓子に釣られて部活を続けているというのも、正直なところある。

今日の作業も頑張ろう!