「九条くんが担任の先生に一緒についていきたいってお願いしたみたい」

お母さんの声が涙ぐむ。

「九条くんね、本音で話してくれたの」

「正直、琴葉が学校に来れなくなったこと何とも思ってなかったんだって」

「隣の席でいつも息を潜めてた琴葉がいてもいなくても変わりないって」

「でもね」

お母さんの目から、涙が溢れる。

「最近席替えがあったみたいなの」

「それで隣の席が琴葉じゃなくなって、別の子になったの」

「新しい隣の子が席替えが終わった後、よろしくねって一言言ってくれたんだって」

「それが嬉しかったって」

「その時、初めて自分も琴葉が隣の席の時に話しかければ良かったって思ったんだって」

「次、学校に琴葉が来たら、隣の席の時話せなかった分話してもいいですかって」

お母さんの涙は止まらない。

「ごめんね、琴葉」

「お母さん、なんか嬉しくて嬉しくて涙が止まらないわ」