俺をモデルにしてくれよ!?…可愛い系男子の願い…

「海藤くんは、緋彩のこと真剣に好きですか?」


海藤ヒカル。

見た目、プレイボーイの彼はーー偏見だけど遊んでそう。

何しろ、人気モデルだよ?
緋彩1人な訳無いよなーー、本当に偏見だけど。




「真剣だよ。
緋彩とは、雑誌の撮影で知り合ったんだけど。緋彩の将来も、考えて付き合ってるから。
チャラく見えるかもだけど、緋彩に真剣に向き合ってるから」




俺の目を見て話す海藤の瞳は、嘘偽りなく、歪んでもいなかった。

偏見でものを見る俺よか、彼の方がよっぽどまともな青年だった。

悔しいーー。
腕に抱く雑誌に少し力を入れたらーー。



茶色の紙袋が、クシャ、と音を出した。

こんなに真剣に見つめられたら、何も言えない。

雑誌の中の彼は今目の前にいて、俺に許しを乞う。

俺は、緋彩の父親になった気分にさえなる。

「ひなくん、黙っててごめんね。
びっくりしたよね」



ーーー。
びっくりなんてものじゃないよ。

心臓止まるかと思ったーー。


「いつから、2人はーー。」



俺は何も知らなかった。
緋彩のことは中学の卒業式以来、モデル事務所に行ってからの緋彩のことは、雑誌でしか知らなかった。

何しろ、ものの半年でファッション雑誌の表紙になるぐらいだから……
多忙すぎてすれ違い。
同じ学校だったのに、入学してすぐほとんどの期間、彼女は学業より仕事に尽くした……。


有名になるーー



そう話して、彼女は"遠い人"になってしまった。




届かぬ、遠い人ーー。


「1年前からずっと…」


1年間何も知らずに隣にいた俺は、ずっと緋彩が好きだったのに。

緋彩には、、


好きな人には


好きな人がいたーー。

こんなことってあんまりだ。

「それでね、最近多忙でさ。
今の学校、事務所から遠くてさ、ヒカルにも話したんだけど……引っ越すことにしたの」


なんだって??

ガタンーーー!!
突然立ち上がった俺に、緋彩はびっくりした様に目をパチクリとした。


「ひな?」




「なんだよ、それ。
なんでそんな大切なことを、2番目に聞かなきゃいけない訳?
幼なじみの俺より、なんでーー!!」




ずっと近くにいて
誰よりも1番だった俺。
いつからーー2番目になってしまったんだ、と悔しくて悔しくて、そして



目の前にいる海藤に、怒りの睨みを効かせた。
横から現れて、大切な幼なじみを奪われてしまった。



いや、自分の気持ちなんて一度も伝えた事が無い。
1ミリも、なんにもしてなかったんだから。
最初から、緋彩に気持ちを伝えていたら
何か変わったかな。。

今更、遅いけどーー。


「ごめんね、ヒカルに話したのはヒカルと同じ学校に通うことになって、、」

非常に言いづらそうな、緋彩に
少しだけイライラした。
好きだからってわざわざ、奴の学校に通う理由がどこにある?

俺の態度が表に出ていたのか、緋彩が泣きそうに見た。







「あのさ」






黙っていた海藤ヒカルが喋った。











「なんで、君の許可が必要なのか分からないんだけど。緋彩が通うには、事務所まで往復2時間かかる距離だし。
緋彩はあんたのものじゃない。
それにーーそんなに心配しなくても
緋彩と俺はいつも一緒だから心配いらないよ」











は?





いつも一緒?




いや、いつも一緒にいたのは俺の方だ。
ただ、仕事で一緒になって
彼氏に運良くなれただけの奴に
悪態つかれてる。



「ひな、ごめんね。
心配かけて、私ヒカルと一緒に住むから大丈夫なんだよ」





は?




一緒に住む?誰と誰が?




「飲み込み悪いね、俺達…
一緒に住むんだよ」



海藤の軽い悪態なんか、気にかけてられない。
頭ん中が、ごちゃごちゃだ。
緋彩を見たら、緋彩は赤面して手をモジモジしていた。


堂々としていて、普段大人びていた緋彩を
ここまで可愛く出来る海藤に
少し……ほんの少しだけ妬いた。


「緋彩……ほんとに?」


海藤の口から出た言葉なんか、
信じられないーー。

欲しいのは………
緋彩の"違うよ"って言葉だけだ。





緋彩は、小さな時からずっと一緒にいた
幼なじみ。。


緋彩の知らないことなんか、1度も無かった。

だけどそれは、中学までの話。


中学を過ぎた辺りから、どんどん可愛くなる緋彩。


追いつけなくなるぐらい………遠くなった。

誰かに必ず1日は
告白されて…だけど何故か彼氏を作らない。
男嫌いまで、噂されていたのにーー。
横に無条件で居られる自分は"特別な人間"だと
勝手に解釈していた。



「ーー本当だよ、ひな。
私ヒカルと一緒に住むの」



冷たいフラペチーノのクリームが
放置していた為に、消えていた。
ほとんど口を付けてないフラペチーノ。
シャリシャリした冷たい氷。
口の中がカラカラで

付いた様に繰り出す咳。

声が………いや、呼吸がおかしい。





俺は膝を付いていた。
立ち上がる気力もないーー。
冷たい床に、沈んでそのまま消えて無くなりたいさえ、思った……。



「ーー!!ひな「触んな!!緋彩なんか、好きにならなければ良かった」





自分を心配して駆け寄って来た緋彩にーー。



「ーー好きにって………ひなが私を?」





あーー、それすら気づいて無かったんかよって落胆した。


だけど、それは自分が悪い。

だって一言も…………






「緋彩なんか、ずっと好きでバカみたいだ、俺はーー!!」






緋彩なんかーーー!!














1度も



緋彩に





"好き"なんてーーーー!!








言わなかったんだよ、俺は。



走ったーー。

フラフラだし、呼吸だって苦しい。
だけど、もう後戻り出来ない。

自分の気持ちを1度も伝えず、
緋彩にひどいことを言った。
緋彩にー。



緋彩なんかにーー!!





なんであんなひどいことーー。
店を飛び出して、ずっと握ったままのフラペチーノは、半分ぐらい溶けかけ
少しぬるめの温度になっていた。

走って来たことで、喉が、乾きーー。
水分補給。
水分補給なんてモノじゃないぐらい。
全て飲み干した。

甘いキャラメルとクリームのフラペチーノ。
甘い味が口の中に広がる。
だけど時々、しょっぱい。


気づいた時ーー涙だと知った。










「緋彩…………」







緋彩の名前を何回も呼んだ。
周りには、誰も居ない。
誰も居ないことをいい事に
俺は、思う存分泣いたーー。




明るかった夕焼け空も
今は真っ暗闇。
バカ見たいに暗い。

「あれ?
もしかして、ひな?」



ビクッ!!
突然背後から自分を呼ぶ声に、一瞬だけ肩が上がる俺。

誰もいなかったはずの芝生。
誰もいなかったはずの公園。

近所の古びた遊具があるーー。
もう錆び付いた遊具に、
危険⚠だから、と遊ばなくなった廃公園。


夜に、こんな錆び付いた遊具のベンチに丸くなり、膝を抱えた俺なんかに
話かけるやつなんか居ないだろうーーってタカをくくっていた俺は



後ろから聞こえた声に、焦った。

懐中電灯の灯りが
確かに俺を映していた。



ワン!!



ワン?



「あ、つばさ」



クラスメイトになったばかりで
1番仲が良い椎名 つばさだった。

泣いてるとこを、クラスメイトに見られた。

しかも、犬の散歩らしい。

こんな古びた廃公園なんか
散歩しに来るなよって心の中で悪態をついた。



「いやー、うちのマロンちゃんが夜道の散歩は誰もいない廃公園がいいって言うからさ」


ーーーーーーー。
マロンちゃん?
このブルドッグが、マロンちゃん?

別に犬好きに、ブルドッグ可愛いか?なんて言わないけど、犬は見た目じゃないし、飼い主からしたらきっと癒しに違いない。

だけど、絶対ぜったいに
廃公園に行きたいなんて行ってないだろう。


散歩途中に俺を見つけて、来てくれたに違いない。


「つばさ、俺を一言で言えばなに?」



俺の言葉に、つばさは赤面し見つめる。

まじ、やめろよ、その顔。
嫌な予感しかしないーー。



「ひな、可愛いよ」




パコーン!!









持っていた雑誌で、つばさを殴った。
これまたいい音が鳴った。


つばさの頭ん中がよーくわかったよ。



「いてーな、仕方ないだろうが!
そこら辺の女子よりお前のが可愛いし。
クラスの奴らがどんだけお前のことを。。「わかったから」



げんなりする。



仲良しクラスメイトなはずだったのに

みんな、俺のことそんな目で見てた真実に泣きたくなった。


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