「佐倉先生、仮眠次どうぞ」

後輩に声をかけられる。

今日は当直。

仮眠の順番が回ってきたので

仮眠室に向かう。

はなちゃんの病室の前を通るから

少し様子みていこうか。

音をたてないよう静かにドアを開ける。

「はなちゃん、大丈夫?!」

ドアを開けた部屋の中で

はなちゃんは嘔吐していた。

「せんせっ、、、」

大粒の涙を流しながら、白衣の裾を掴んでくる。

今すぐにでも、代わってあげたいのに

何もできない現実に胸が締め付けられる。

「辛いな。呼んでくれればすぐ来たのに。」

薄い背中をさする。

ここしばらく何も食べれてないから

出てくるのは胃液だけ。

「おみず、のみたい」

口渇感があるようで、水を求めてくる。

そもそも、この状態で水なんて飲めるんだろうか。

そう思いながらも、ペットボトルを開け、

口元に運んであげる。

数口含んだ時点で、はなちゃんの表情が歪んだ。

「大丈夫?無理そうなら出した方が、」

自分が言い切る前に

さっき含んだ量以上の液体を戻す。

水すらダメか、、、