人に会いたくなくて、

病棟に戻る気にもなれなかった。

思いつきで

行ったことのない

非常階段を登ってみる。

ここに勤めて数年だけど初めて通るな。

数段分登ったところで

気づかないくらい

壁と同化するドアが現れた。

こんなの、多くの人は気づかないだろう。

興味本位で取っ手を回す。

ドアを開けた先は、ベランダで

そこには一脚のベンチと灰皿と

白衣を着た長身の男。

その男は

フェンスにもたれてタバコをふかしている。