「で。よ?」

「ん?」

夏海が話を振ってくる。

もぐもぐ食べ進めている私は目元だけ夏海に向ける。

「家がないーって話よ。

先輩のとこいったらいいじゃーん!と思って!」

「…は?!」

初対面の人の家に行けと?!

「な、え、は?」

なんで、えっと、はい?
言葉にならず、ぐるぐる頭が追い付いていない。

「会社から家が近い!
一人で暮らしてるのに、家が広い!
ご飯を作れる奈緒なら同居いいって!
悪くないでしょ!」

そんな軽い感じで決めれるか!!

「急に言われても即答なんかできないわ!」

えー、と口をとんがらせる夏海。

「まずよ?なんで相馬さんはいいんですか?」

「…料理が得意なんだろ?早川(夏海のこと)から聞いた。
部屋はあるし、料理してもらえるならいいかなと。」

確かに、会社にお弁当作っていったりはするし、休みの日も料理はする。実家でも作ってたし。
 
でもだ。

人に胸を張って料理できるかといったら、自分は自信満々ではない。

赤の他人を住まわせてもいいって、そんなにおうち広いの?

ええ?…なんだか裏があるような気がして仕方ない。
 
「…その、なんだ。…うん。」

歯切れが悪い相馬さん。

「はい?」

なんだろうか、言いづらいんだろうか。

「言っちゃえばいいじゃない!
自分の料理が美味しくなくて健康診断引っかかったって!」

「おい!」

あっけらかんと話す夏海。
それに慌てる相馬さん。  

話を聞けば、一人暮らしだけど自分の料理が美味しくなくて、コンビニとかそういうのを食べる回数が増えてしまい、健康診断の数値がよろしくなかったらしい。

それを仲間内の飲み会で話していて、夏海が料理上手い子が困ってるんだけど、と、連絡をとったらしい。

「でも、私はそんなに料理すごーくできるわけじゃないですよ? 
そりゃ、生きるためには美味しいもの食べて生きたいから料理もしますよ?
相馬さんにメリットあるかどうか…」

「ある。料理してくれれば。
とりあえず、うちにあるのなんでも使っていいから…どうかな…?」

そんな私の料理にメリットあるとは思えないけど…でも私的には相馬さんのお家から職場までの通勤時間がいまの通勤時間と変わらないし、立地はすごくいい。
夏海がワクワクした顔で見てくるのもなんか気になるとこだけど…。

「もちろん無理にとは言わない。いきなり知らない男と二人暮らしも佐倉さん困るだろうし。
でも、協力してくれれば嬉しいし、その分住むところは提供するし。
もちろん彼女とかはいないから、急に出ていってくれとかは言わないし。
早川が面白そうにしてるのは面白くないけど、こっちとしてはありがたいんだよね」

そんなにメリットあるのか…自分的にはそんな感じしないんだけどな。
でも、お金がこれからかかることだし…
結論は出ているようなもんだよね。

「…うう…よ、よろしくおねがいします…」

深々頭を下げた。