「兄さん、さすがタキシード似合ってるね。」
果穂が選び抜いた、シルバーブロックのロングタキシードをそつなく着こなす翔は、
髪型も美容師によって整えられて、
まるでモデルの様な出立ちに、神々しさまで感じる。

ただ、表情だけは淡々といつもの無愛想を保っているが。

そんな翔の待合室に、弟の健が会いに来る。

「健か…、ありがとう。
受験勉強は、はかどっているか?
大事な時期にわざわざ来てくれてありがとな。」

「気分転換に丁度いいよ。
最近、家と塾の往復でストレスが溜まっていたから。」

「そうか。それなら帰りがけに温泉でも入って行ったらいい。」

ハハッと健は笑いながら、
「父さんと同じ事言ってるよ。
あの父さんが、一緒に露天風呂に入ろうとか言ってくるんだよ。本当変わったよな。」

「一緒に入ってやればいい。」
ハハッと翔も思わず笑う。

「ヤダよ。子供じゃ無いんだから…。」

「よう。翔!暇そうだな。」
雅也と優斗もやって来る。

「式まで果穂ちゃんに会えないんだってね。」
楽しそうに雅也が言う。

「…まさかお前ら、果穂に会ったのか⁉︎」

「さっき、待合室に挨拶に来てくれたからね。
ウェディングドレスすっごい綺麗だったよ。」
雅也がそう言う。

「俺が呼ばれた結婚式の中で間違え無く、
1番綺麗な花嫁だよ。」
優斗もそう言うから、まだ会えていない翔は余計悔しく思う。