着替えからのこのこ戻って来た父が、
「翔くん、ごめんね。つい言っちゃって。」
と、コソコソ誤ってくるので、

「いえ、自分がいけなかったんです。
気にしないで下さい。」
と、頭を下げる。

「ところで、結婚式は何日に決めたの?」

「はい、10月25日の大安にキャンセルがあったので、その日をとりあえず押さえておきましたが、ご都合の方は大丈夫ですか?」
翔は気を取り直して、そう伝える。

「例年みかんの収穫がその辺りから始まるけど、1日くらいどうって事ないよ。
うちは合わせられるから、むしろ翔君のご実家の方に聞いてみた方がいい。」

「ありがとうございます。
結婚式に関しては、何も口出しさせませんので、大丈夫です。」
堀井コーポレーションの社長だよ⁉︎
と、父は内心思うが、息子がそう言うなら大丈夫なんだろうと気持ちを落ち着ける。

「あの、果穂さんの幼馴染の純君ですが…、彼を呼ぶべきか迷っているみたいなんですが、どうなんでしょうか?」
翔が1番気になっている事を聞いてみる。

「ああ、純君ね。
まぁ、農協関係で良くしてもらってるから…うちの担当でもあるし、呼んだ方がいいだろうな。果穂は嫌だって?」

2人して果穂を見るが、まだ可奈と一緒になって、亮太に説教をしている様だ。

「苦手だとは言ってましたけど、
以前、2人の間に何かあったのですか?」

「いや、小さい頃からよく泣かされていたけど、純君がって言うより、男性恐怖症と言うか、家族以外の男全般が精神的にダメなんだと思うよ。
だから、君を連れて来た時正直言ってびっくりしたんだ。」

「そんなになんですか?
亮太からも聞いてはいたんですが、
俺には初めからそんな風では無かったので。」

「翔君は果穂にとって、本当に特別なんだと思うよ。ある意味選ばれた男なんだよ。」
翔は、果穂の父親からそう言われ、
思わず嬉しくなって笑顔が溢れる。

父は重い腰を上げて亮太を助けにキッチンへ向かった。