果穂の気持ちを掻き回すのはやめてくれ、
と亮太に悪態をつきたいのを我慢して、
翔は心を落ち着けて果穂に話しかける。

「やっぱり、カタチは必要だろうって親父にも言われててさ。
でも、果穂に話すと反対されると思ったから。」



「ちょっと、亮太!
私が居ない間に、何、果穂ちゃん達いじめてるの!!」
可奈がキッチンから顔を出して、
直ぐにただならぬ空気を感じ取り亮太を責める。

「すいません、翔さん。
この人、果穂ちゃんを獲られたみたいにちょっといじけてる所があって…。
子供じゃ無いんだから本当。」

いらないとばっちりを受けて、
翔も弱るが果穂の兄でもあるから、
何も言い返せない。

「いえ、元はといえば言わなかった自分が悪いので。」
翔も果穂に言わなかった事を反省する。

「それよりも、聞いてよ果穂ちゃん!
この人、私に内緒でコツコツ貯めてる結婚式のお金使って、勝手にパチンコに行ったんだよ。その方がよっぽど酷いよ!」

「えっ⁉︎
それはお兄ちゃんが悪いよ。
全部お兄ちゃんが悪い!」
果穂の怒りの矛先が、亮太に変わって翔はホッとする。

「なんだよー。
結婚資金を少しでも増やそうと思ったんだよ。倍になる予定だったんだから…。

しょう、お前、今あからさまにホッとしただろ。」
亮太も嫁の尻に引かれて、可奈には頭が上がらない。