「どう言う事ですか?」
翔に果穂は詰め寄って問いただす。

果穂が敬語になる時は、
緊張しているか怒っているかのどちらかだ。
と、翔は承知している為、言葉を選びながら話し出す。

「こっちの、店舗の地鎮祭の時に、ちょっと寄らせて貰ったんだ。
入籍前にちゃんと、お義母さんのお墓にも挨拶に行きたかったから。」

「私も一緒に行きたかったです…。」

「ごめん。ほら、地鎮祭があったし、
会社の社員も何名か一緒だったからさ。」
果穂の顔色を伺いながら、翔は話す。

2人の話に亮太は割り込んで、
「果穂は何にも知らないだろうから、
俺が教えてあげるけど、しょうがわざわざ結納金を持って来てくれたんだよ。」

翔(かける)の事をしょうと呼ぶ兄と翔は
思いのほか仲良くなり、
それどころか近頃はよくメールや電話のやり取りもしているらしく、
果穂は若干寂しく思っているくらいだ。

そんな兄から、まったく知らなかった事実を知らされ、少なからず果穂はショックを受ける。

翔は兄にバラされて、額を片手で抑え一瞬考え込む。

「果穂…、別に内緒にしようと思った訳じゃないんだ。
果穂が気にするといけないと思って言わずにいただけだ。
それに、お義母さんに花を手向けたかったのが一番だし。」
今にも泣きそうな顔の果穂を、
どうにかしようと翔は言葉を尽くす。

そんな2人を見て亮太は満足そうに、
微笑みを浮かべる。
「まぁ、御曹司で社長で、おまけにイケメンでも、うちの果穂には勝てない訳だな。
良かった良かった。」