「お帰り果穂、翔君。式場は決まったのか?」
畑で仕事をしていた果穂の父と兄が帰ってきた。
「ただいま。」
「お邪魔してます。」
2人はそれぞれ挨拶をしてリビングへ移動する。
「すっごく素敵な教会でね。
ひと目見て気に入っちゃったの。」
果穂が嬉しそうに話す。
「果穂の頭の中はお花畑だなぁ。
大丈夫なのかそんなんで、御曹司様のご家族は?
こんな田舎にわざわざ来てくれるのかよ。」
兄の亮太が嫌味っぽくそう言って果穂をワザと怒らす。
「何でお兄ちゃんは、そんな言い方しか出来ないの?
翔さんに御曹司って言わないでって言ってるのに!失礼だよ。」
「うちの実家の方は大丈夫なので気にしないでください。
それより、父がこちらにご挨拶も無しで申し訳ないとしきりに言っております。
結婚式までには、連れて来ようと思っていますので、またその時はよろしくお願いします。」
翔がすかさず言う。
「えー。それは緊張しちゃうなぁ。
堀井コーポレーションの社長さんだろ?
こんな狭い家に来てもらっても申し訳ないなぁ。」
果穂の父は頭を掻きながら恐縮する。
「この前、翔君がわざわざ来てくれたから、きっと家内も充分だって言ってくれてるよ。」
「えっ⁉︎翔さん、いつこっちに来たの?」
果穂はまったく聞いていなかったので、
びっくりする。
「父さん、果穂には内密にって言われてただろ?」
兄が苦笑いしながら言うと、
あちゃーと言う顔で、父はそそくさ自室まで着替えに行ってしまった。