貸切風呂は即刻、果穂によって却下されたが、湖沿いのカフェや雑貨屋に立ち寄って、夕方までデートを楽しみ実家に帰宅する。

果穂の実家に帰ると、
亮太の新妻になった可奈が夕飯の準備をしていた。

「可奈さん、ありがとうございます。
一緒に手伝うね。」
果穂も急いでキッチンに立つ。

「大丈夫だよ。
今日は果穂ちゃんがお客様なんだから、
久しぶりの実家でのんびり過ごしてね。
ほら、お母さんに手を合わせておいでよ。」

姉御肌の可奈はしっかり者で、
亮太の事も実家の事も支えてくれている。

「ご無沙汰しています。
すいません、休日に押し掛けてしまって。」
翔も、可奈に挨拶をする。

「今晩は。全然大丈夫です。
むしろ2人が来るのを待っていたくらいですから。
あっ、ドーナッツ ありがとうございます。
さっき頂きました。
すっごく美味しかったです。」

「気に入ってもらえて良かったです。」
翔も笑顔で答える。

「お義母さんの所にも、置いておいたよ。」

「ありがとう。」
 
果穂と翔は和室に行き、母の仏壇に手を合わせる。

「ただいま、お母さん。」
果穂は子供の頃からの癖で、仏壇の母の写真に話しかける。

「私、翔さんのお嫁さんになったんだよ。
結婚式場も決まったからね。」
母の遺影にそう話しかける果穂を、
翔はそっと優しい目で見守っている。