式場を後にして、湖周辺をドライブする。

そういえば、入籍してからデートっぽい所に来たのは久しぶりだった。

太陽は眩しいけど、風も吹いてて気持ちいい。

道の駅で休憩すると、足湯ならぬ湧水の足水を見つける。

「翔さん、冷たい水なんだって! 
入りましょ。」
果穂はワクワクしながら水風呂の縁に座り、靴下を抜いで、スカートの裾を濡らさないように気をつけながら、足を入れる。

「ひゃ、冷たい。」
楽しそうな果穂を見て、翔もつられて笑顔になる。

果穂の華奢な足が、白く綺麗な肌が、
水の中で揺らめき、艶めかしいと思ってしまうのは、自分だけじゃ無いはずだ。

と、翔は思い周りの目を気にしてしまう。

果穂を他人の目から隠すように、
翔も隣りに座りズボンをたくし上げ、
足をそっと入れてみる。

「思ったより冷たいな。」
いたって冷静な反応だが、
これでも果穂と同じくらいテンションは上がっている。

「これで、一緒にお風呂に入れたね。」
果穂が耳元でそっと翔に言って、
ふふっと笑う。

「…これは違うだろ…。」
翔は苦笑いする。

近頃の果穂は、小悪魔的な魅力を振り撒いて、夫である翔はいつも翻弄されてしまう。

今日も可愛く翻弄されて、
翔は人知れずそっとため息を吐く。

当の本人は無自覚だからタチが悪い。

「この辺りは、温泉地だよな。
どこかに日帰り温泉とか無いか?
せっかくだから貸切風呂でも入って帰ろうか。」
翔も負けじと、こそっと果穂に耳打ちする。

途端に果穂は真っ赤になって、かぶっていた麦わら帽子で顔を隠す。

そんな2人の姿を、通りすがりの女子達が立ち止まり、まるでドラマのワンシーンを見ている様な気持ちで騒めき立っている事を、
当の本人達は気付く余地も無い。