ホテルで予めレンタルした車に乗り込み、
とりあえず実家に向かう。

見慣れたはずの地元の景色が、いつになく輝いて見えた。

「お義父さんにも、さっきのドーナッツあるから。渡してあげて。」

「えっ!
本当は、わざわざ用意してくれたの?
ありがとう。」
バタバタして手土産なんて、まったく考えてなかったと果穂は少し反省する。

翔の運転で実家に着いて、玄関のチャイムを押す。

自分家なのに、他人の家みたいに思えて不思議な感じがする。

「おお、いらっしゃい!早かったな。」

父は、家の隣の事務所兼倉庫にいたらしく、笑ってこっちに近付いて来る。

「お父さん、ただいま。」
果穂も嬉しくなって手を振る。

「もしかしてさっきのヘリ?
やたら近いなぁと思って見てたんだよね。」

「うちがすっごく小さく見えたよー!
みかん畑もミニチュア模型みたいだった。」

果穂らしい、可愛いい表現でさっきの出来事を父に語る。

翔はそんな果穂の様子を微笑みなが見守っていた。

「今日は、湖の方まで式場観に行くんだろ?早く行っておいで、夕食はうちで食べる様に帰って来ればいいから。」

「ありがとうございます。泊まらせてもらって本当にいいんですか?」

「もちろんだよ。
亮太も夜にはこっちに顔出すって言うし、
久しぶりに賑やかになるな。」

「あっ!
これ、お土産。
翔さんが用意してくれたんだけど、
東京でも並ばないとなかなか買えないドーナッツなんだよ。
しかも、期間限定なの。」
果穂は先程渡された箱を、父に渡す。

「おー!それは大事に食べないとな。
ありがとう。翔君。」

「いえ、とんでもないです。
なかなか果穂をこちらに帰してあげられなくてすいません。」
1人で寂しいだろうし、
果穂が居ないとみかんの仕事も大変だろうと翔は察する。

「亮太の嫁の可奈ちゃんもご飯を持って来てくれるし、気ままな一人暮らしを満喫してるよ。」
元気そうな父の顔が見れて果穂もホッとした。