パタパタとやって来た雅也は、ノックもしないで入って来る。

「お疲れ様、果穂ちゃん。起きたみたいだね。」

果穂は急いで立ち上がり、髪を整えながらペコリと頭を下げる。

「お疲れ様です。ご無沙汰してます。」

「果穂ちゃんも元気そうだね。
キッチンカーは順調?」

「はい。毎日は出してないんですけど、
常連さんも付いてくれて、順調です。」

「あのさ、ちょっとだけ果穂ちゃんの意見を聞きたいんだけどさ。」

「ちょっと待て、その話し長くなるのか?」

俺が2人の間に割り込み、腕を組んで雅也に問いただす。

「あーー、15分くらい? 
お前が俺に任せた会議の話しだよ。
ランチ向上委員会を立上げたんだよ。
 
職場のランチミーティングを増やして、社内の交流を増やそうって言う。」

「ああ、あったな。」

「是非、社長も参加して下さいって言われてたのに、当日お前がいきなり俺に回して来ただろ。
本当まったく分野外だったからさぁ。

俺はマーケティング戦略方面担当の筈なのに、
なんだよ。ランチ向上委員会って。」

「でも、意外と楽しんで革命起こしてるって新田が言ってたぞ。」

「お前がやらないからだよ。」
そう言いながらも、雅也は楽しそうに資料を出してくる。

翔は、新田にハンズフリーで内線して、飲み物を3人分頼む。

「新田、自販機で買って来て俺が出すから。コーヒー無糖2つと、果穂ちゃんは何がいい
?」
雅也が言うが、

「えっ?あ、だ、大丈夫です。」
果穂は遠慮してしまう。

「果穂、お茶、ミルクティー、ココアのうちどれ?」

「えっーと、ミルクティー?」

「ホット、アイス?」

「ホ、ホット?」

「新田、よろしく。」

『承知しました。』

果穂はこう言う聞き方の方が答え易い事を翔は良く知っている。

「あの、副社長さん、ありがとうございますご馳走様です。」