「なぁ、果穂。
ドリンクを提供する時に、こうやって手を握られる事ってよくあるのか?」

果穂の手を握り、真剣な眼差しを送ってくる翔に少し怯みながら、よく考えてみる。

「うーん、どうだろう? 
忙しい時間帯だとあんまり気にしていられないから。」

「これから、差し出す時はトレーを置いて、その上にドリンクを置く方がいいと思う。」

「はい…。」
果穂は、なんだか叱られた気持ちになってシュンと下を向く。

「ごめん、怒ってる訳じゃない…。
ただ、心配なんだ。
俺の奥さんはすごく可愛いから…。」

そう言って、ぎゅっと抱きしめられる。

「果穂にもしもの事が、また合ったらと思うと怖くなる。」
果穂は翔の広い背に手を回し、ぎゅっと抱きついて言う。

「心配しないで。
私だってちゃんと警戒してるよ。
旦那様を安心させるくらい、しっかりした奥さんになりたいから。」

「ありがとう。
俺も、果穂の事になると途端に臆病になる。
仕事じゃ、こんな事無いのに…。」
翔は、ふぅーっとひと息吐いて気持ちを立て戻す。