書類に目を通し印鑑を押す。
これを三回繰り返したところで、優斗からの内線が入る。

新田が用意周到に手元に置いていってくれた、コードレスの子機を手に取り話をする。

しばらく報告を受け指示を出し、決定箇所を伝える。
電話を終えて、ふと果穂に目を落とす。

軽く開いたピンク色の唇に、キスをしたい衝動に駆られる。
その隙間に舌を差し入れ貪りたい。 

仕事中だと言うのに、要らぬ妄想に煽られて、思わず、体が反応しそうになる。
そっと、人差し指で柔らかい唇に触れてしまう。

気持ちを落ち着ける為深呼吸をする。

思えば果穂を抱き潰してしまった夜から、 
反省の意を示す為、一度も抱かずに、
抱きしめて眠るだけの夜を繰り返してきた。

耐え抜いて何とかやり過ごして来たが、
限界まできている。

果穂の純粋無垢な心を守りたいと思いながら、1番穢しているのは自分では無いかと、
最近矛盾を感じてしまう。

果穂に会う前までは、自分は淡白な方だと思っていた。
仕事が忙しい時期は1年以上女性に触れないくても平気だった。

それなのに、果穂を求める自分は異常な程に執着してしまう。
身体中に散らしたキスマークはもう消えてしまっただろうか。

さっき、キッチンカーに並んでいた客達に嫉妬してしまった反動か、要らぬ思考回路に直ぐ繋がってしまう。