新田を採用した時に、雅也が言っていた言葉を思い出す。

『秘書にするにはもっと従順で
思い通りに動いてくれるような奴の方が扱い易いと思うぞ。

新田は野心があり過ぎる。
お前が弱った時、サッと全てを掻っ攫ってくような危険な感じがするが、扱えるか?』

あの時、
『俺がもし、全てを掻っ攫われるならそれまだって事だ』と、返事をした。
俺はこいつを上手く扱えているだろうか?

頭のキレる参謀がいると、社長としての立ち位置を、たまに見間違えそうになる。

「あと、部長と副社長も呼んでくれ。」

「分かりました。スケジュール調整します。果穂さんは?当事者同士を呼んだ方が手っ取り早いのでは?」

「果穂を矢面に立たせたく無い。」

「相変わらず、過保護ですね。
後から知ると逆に傷つけませんか?」

「戸川が自主的に謝罪する様に促すつもりだ。それが出来なきゃ、人事で考えてもらうしか無い。」

「戸川さん、入社歴を鼻に掛けてる所があるので、きっとそれが1番堪えると思います。
もしかしたら、辞職もあり得ますね。」

「それは致し方無いだろ。」

「分かりました、至急対処します。」
ニヤッと悪い顔で笑う。

「新田…、その顔やめろ。
クリーンなイメージじゃ無くなる。」
苦笑いしながら言うと、

「俺、任侠漫画大好きなんっすよ。
他人の揉め事に首突っ込むのもワクワクしてしまうんで、つい顔に出ちゃうんです。
すいません、気をつけます。」

「まぁ、分からなくも無いが、その顔ヤバいから、秘書らしくしてくれ。」

「善処します。」