「戸川さんの事、どうするつもりですか?
果穂さんになんて言われたか、聞きました?」

「いや、あえて聞かなかった。
果穂は他人の悪口になる様な事は決して言わないだろし。
しかも、社長の俺に話すと戸川が働き難くなってしまう事も分かってるから、
話さないのかもしれない。」

「昨晩、副社長が諭してましたが
…多分そんな簡単に腹黒さは消えないと思いますよ。」

「果穂に何を言ったか分かったか?」

「社長の隣に立つのに、貴方みたいな人は相応しくないって、言ったらしいですけど、
多分もっと辛辣な事言ってますよあの人。
俺より腹黒でしたから。

あばよくば、貴方と付き合いたいと思ってる、痛いタイプの方だったので、
横取りされたぐらいの気持ちだったのかもしれないです。」

「お前より腹黒なら、相当傷つけられたな…。」
なのに俺はそんな時に……、

はぁーっと、また深い溜息を吐く。

以前から戸川は、やたら距離の近い女だとは思っていたが、仕事はきっちりやるし特に気にも止めていなかった。

果穂以外の他人に対して興味の無い俺にとって、何とも感じていなかったのだが、
ここに来てそれが仇となり、果穂が傷付けられるなんて…もっと早めに対処しておくべきだった…。
 
これも俺のせいだな…。

自己嫌悪に陥りながらも、なんとか体裁を整える。