彼女の夫である翔は、彼女を溺愛し、
出会ってから今日まで変わる事なく、
まるで真綿に包む様に大切にしている。

はたから見たらそれは過保護なくらいで、
もう少し自由にしてあげた方が良いのでは、と心配されるくらいの溺愛ぶりだ。

今だって、オフィスの一角から1人で働く果穂を心配し、出来れば駆けつけて手伝いたいと思っている事だろう。

彼のスケジュールを調整する秘書や、
貴重な休憩の度にキッチンカーまで送迎する運転手は、生暖かい目で社長の事を見守っている。

元々彼はそんな人では無かった筈…

彼がオフィス内を長い足で闊歩する姿は、
社員の誰もを釘付けにし、 
ときめきと憧れの眼差しを向け日々の仕事の励みにすらなっている。

185センチの長身で容姿端麗、
おまけに御曹司。

こんな完璧な男の目下の悩みは、妻が可愛すぎる事だ。

どこかの見知らぬ男共が、
1人で働く果穂を眺め声をかけたい触れてみたいと、良からぬ妄想に掻き立てられてはないか、日々心配している。

男避けになるから仕事中も婚約指輪を外さずに付けて欲しいのだが、
大きなダイヤの装飾が仇となり、傷つけたり失くしたら怖いと言って、早々ネックレスに繋がれ見えなくなってしまった。

その為、結婚指輪を急ぎ作製してもらっている最中だ。