時間になり、案内人の後に続き会場に向かう。

果穂の緊張はピークなのは手を取るように分かる。

励ましのつもりで翔は果穂のてを手取りぎゅっと繋ぐ。
氷のように冷たくて余計心配になる。

「果穂、絶対1人にしないから大丈夫だ。
何も心配する事なんて無い。」

「はい…。」
上目遣いで俺を見るが、やはり緊張は隠せない。どうすれば良いかと考えながら階段を上がる。

親父の過剰な演出によって、なぜか階段上から登場するという事になっている。

着慣れない着物で階段は無謀だと、リハーサルの時点で抗議したのだが、段取りを今更変えられないと却下された。

果穂を抱き上げて降りてやろうかとも思ったが、あまり目立つのを好まない彼女は絶対嫌がるだろう。

仕方なくここは果穂に合わせて出来るだけゆっくり降りるしかない。

司会者の声に合わせて扉が開く。