内心、ハラハラしながらも平然とした態度を保って、
「果穂の心を守る事が俺の使命だと思ってる。」
そう伝える。
「大変な使命ですね。
この世界に生きていくには、
果穂さんの心が綺麗過ぎて心配です。」
確かに、
この俺のいる世界は、欲と権力と金に塗られた人間の最も汚い部分が集まっている。
自分がのし上がる為には、他人をいとも簡単に蹴落とし、せせら笑い。
仲良くしているかに見せて、裏で悪口を叩く様な、そんな大人達の集まりだ。
この、控え室を一歩出ればきっと、
そこはある意味ビジネス社会の戦場だ。
果穂が巻き込まれないよう、
傷付けられないように守らなければと強く思う。
「そうだな…。
彼女をこの汚い世界に巻き込んでしまった責任は俺にある。
心を無にして生きてきたが、
俺自身の心が彼女に救われたかったのかもしれない。
だから、彼女を守らなければと強く思う。」
「貴方なら出来ますよ。
きっと自分がボロボロになっても、
守り抜ける強さが貴方にはあるから。
ただ、貴方自身を大切にしないと、
果穂さんが泣く事になります。」
「分かってる。
戦うだけじゃ無く、逃げる事も大事だって事を。今、着実に準備は整えてる。」
にこりと笑って本谷を鏡越しに見る。
本谷も鏡越しに微笑みを返して、安心したように、
「本日は誠におめでとうございます。
良き門出にご一緒出来たことを嬉しく思います。
どうか、末長くお幸せに。
では、僕はまたお色直しの時に伺いますね。」
そう言って、一礼して去って行く。
彼もまた、男に生まれなが女の心を持って、この世界で戦う戦士の1人なのだと、
気付く。
敬意を込めて一礼をする。