何はともあれ、翔と果穂の結婚披露宴は幕を開ける。

あれから幾分話し易くなった翔の父は、
時間を見つけては、果穂のキッチンカーに顔を出すようになった。

弟の健も大学の帰りに寄ってくれたりと、いつにも増してキッチンカーは賑わいを見せている。

時折、翔が来る時間と父親の来る時間が重なる時もあって、その都度、親子喧嘩のような漫才のような感じになるのだが、果穂はそんな不器用な2人を可愛らしいと、優しい気持ちで見守っている。

披露宴会場は、都内屈指の有名なホテルをほぼ貸し切り、国内外から多くの重鎮が訪れると言う豪華なものになった。

果穂が思っていたよりも何倍も大きな披露宴会場は、緊張を通り越して怖いと言う恐怖に近い感情しか無い。

ただ一つの救いは、今回は果穂の経っての願いで控室を翔と同じにしてもらえた事だ。

側に翔が居るだけで、果穂の緊張も和らぐ気がするから不思議だなと思う。

今日何度目かのため息をついて、果穂は着物を着付けてもらう。

もちろんカーテンで仕切られてはいるが、
近くに翔が居るのを確認しては、その度ホッとする。