「余り他人に言わないで欲しい。
果穂が1人で切り盛りしているから、これ以上客が増えると大変だから。」
翔のそんな過保護な制しに、父もさすがに大笑いして、

「経営者らしからぬ事を言うんだな。
客が増える事は良い事じゃないか。
忙しいなら誰か人を雇えば良い。」

前にも雅也さんが言っていたなと果穂は思う。

「果穂は特に利益を求めていない。移動カフェは趣味みたいなものなんだ。」
翔はそう言って父を見返す。

「元々は、実家で作る果物をPRする為に趣味を兼ねて始めたんです。
採算を考えてやってはいないので、人を雇う程利益は無いんです。
お義父様が来られたらもちろん無料で提供させてもらいますね。」
果穂本人も笑顔でそう言う。

「勿体無い気がするが…、
健には教えてもいいんじゃないか?」
と、翔を見ながら父は言う。

「あいつに場所を教えると、やたら客が増えそうだと思ってあえて教えなかったんだ。
しかも大学でもサッカーやってるって聞いたから、忙しいんだろ?」

「まぁ、毎日遅くまで練習しているようだが…
場所くらい教えてくれたっていいのにと、愚痴ってたぞ。」

「親父から伝えてやってくれ。」
翔は仕方なく、息抜きぐらいにはなるだろうと、身内にだけには教える事を許す。