やっと手当が出来てホッとする。

「果穂は、もうちょっと自分の事を大切にしてくれ。俺が心配で気が気じゃ無い…。」
そう言って、果穂の頬を優しく撫でる。

「そんなに、無茶してるつもりは無いけど…?」

「あの女に、1人で立ち向かって傷付けられただろ?」

「痛かったのは…宮崎夫人だよ?」

「身体的じゃ無くて心の傷の事を言っているんだ。果穂が辛いと、俺も倍辛いと思って欲しい。」

「翔さんも、辛かったんですか……?」
はぁーと翔は深く息を吐く。

「元はと言えは俺のせいだろ?
過去とは言え…
あんな女に関わらなければ、果穂があんな罵声を浴びせられて傷付けられ事は無かった筈だ。
過去の行いを心から悔いている。」
俺は後悔の念に襲われて、果穂に許を乞うように頭を下げる。

「大丈夫ですよ。
私、言われ慣れてるし多分1週間もすれば忘れちゃうから。」
果穂は責める事もせず、あえて明るく言っておどけてみせるから、俺の心はズキンと痛む。

俺は下唇を噛みながら、

「…俺は既に果穂の物なんだ。
俺の心は果穂で埋め尽くされている。だから、果穂が泣くと俺も悲しい。
果穂が傷付けられると、俺も傷付く。
俺のためにも自分をもっと大事にして欲しい。」

果穂はそういう俺の、頬に手を伸ばしよしよしと撫ぜ、これ以上唇を噛まないようにと心配する。

「それじゃあ…私も翔さんの物って事?
翔さんが辛いと、私ももっと辛いから…。」
小首を傾げて聞いてくる果穂に、俺はふっと笑って、

「そうか…じゃあ俺も果穂のために自分を大事にしないとな。」

「……さっき翔さんは私の物ですって言うべきだった…?」

「言ってくれたら嬉しかった。」
そう、翔が笑う。

「じゃあ、今度そう言う時があったら言うね。」
と、果穂が言う。

「そんな事は2度とあって欲しく無い。」
果穂をぎゅっと抱きしめ合う。

「これからは、気を付けます。翔さんの為にも…。」