「何様のつもりなの?」
威嚇の為か真っ赤なドレスの女、麻里奈はソファに座り足を組みながら果穂を睨みつける。

果穂は終始穏やかに、

「あの場では、翔さんにご迷惑を掛けてしまうといけないと思いましてすいません。
ゆっくりとお話しを聞かせて頂きたかったんです。」

そう言って、向かいのソファにすっと座る。

「翔さんにどの様な御用なんでしょうか?」

真っ直ぐ見据える彼女の穢れなき瞳に、麻里奈は若干たじろぎをみせる。

「私は、ずっと翔さんを見てきたの。
貴方と出会う前から、結婚しても彼への思いは変わらなかったわ。
彼が欲しいの。お子様の貴方に意味分かる?」

身勝手な言い分に翔は怒りを覚えるが、
気持ちを抑え見守る事に徹する。

「ごめんなさい。
言われている意味が良く分からないのですが……。
ご結婚なされていらっしゃるんですよね?

翔さんも、私の旦那様ですし…
物では無いので、はい、どうぞとはあげられ無いと思うんです。」

「そんな事分かってるわよ…馬鹿じゃないの?
私が言いたいのは、愛人でも構わないって言ってるの。
要は体の関係だけでも構わないのよ…。
悪いけど貴方じゃ、翔さんの相手には少し物足りないんじゃないかしら?」

なんて下品な言葉で果穂を陥れようとするんだ。
我慢ならない物言いに耐えかね俺は一歩を踏み出す。

それを雅也がすんでの所で止めに入る。

「翔、耐えろ!」

雅也は何とか押さえるが翔に殴られそうな勢いで若干ビビる。

そのタイミングで、突然バタンとドアが空き
1人の男が足を組んで太々しい態度の麻里奈に走り寄る。

バッシン!!!!

部屋内にいる誰もが止まり目を見開く。

麻里奈の頬を目がけて右手の平が振り下ろされたのだ。