そのタイミングで、ガチャっと玄関が開く音がして翔さんが帰って来た。

「あっ!帰って来たみたい。
ごめんね、忙しい時間帯に、
ありがとうお兄ちゃん、何かスッキリした。」

『おお、兄ちゃんも頼りにしてくれて嬉しかった。じゃあ、またな。』

「うん、またね。お父さんの事よろしくね。
じゃあね。」
そう言って電話を終えて急いで翔さんの所へ行く。

「お帰りなさい。」
リビングにいる翔さんに小走りで走り寄る。
途端にぎゅっと抱き締められてびっくりする。

「居なくなったかと思って、焦った…。」
ああ、そうだった…
 
翔さんは私が誘拐された時から、
この時間に私が家に居ないと不安にさせてしまうんだった。

「ごめんなさい。ちょっとお兄ちゃんと電話をしてて。」

ぎゅっと抱き付くと、翔さんの鼓動が早く打つのを感じる。大きな背中をさすってみる。