コンコンコン

と、遠慮がちにノックされる。

「果穂、腹空いただろ?
夕飯届いてるから出て来て一緒に食べよう。温めてるぞ。」
翔さんがそう言ってくる。
それを聞いて、私のお腹もぐぅーとなる。

カチャっとドアをそっと開けて廊下を覗く。

「抱き上げるぞ。」
翔さんに抱き抱えられて有無を言わさずダイニングテーブルに連れて行かれる。

テーブルにはパスタやピザが4人前くらい並べられていた。

「…こんなにいっぱい食べられないです…。」

「果穂が食べたいだろう物を選んだから、
これでも絞り込んだ方だ。」

翔さんは手早く、パスタとピザを温め直してくれる。

「あっ、私がやります。」

ボーっと見惚れていたが我に返って立ち上がる。

「大丈夫だから、果穂は座ってろ。」

目の前にはミネラルウォーターが置かれ、
翔さんがご丁寧にもキャップを外してくれる。

「…ありがとう。」
大人しくミネラルウォーターを飲みながら、
支度を待ち、一緒に手を合わせて頂きますをする。

取り皿にパスタをそれぞれ分けて食べる。
私は和風パスタ、翔さんはトマトのクリームパスタを食べる。

「お夕飯またせちゃってすいません…。」

「俺も仕事を片付けてたから大丈夫だ。
それより、頭痛がするとか身体に力が入らないとかないか?」
私の身体の事を心配してくれる。

「大丈夫、です…。」

「亮太に、果穂は風呂で寝る事があるから気を付けろって、言われてたのを忘れていた。
実家でも同じような事があったのか?」

「…そんなには……、寝そうになって、兄にけたたましく起こされた事は有ります。」
呆れられたかな?
翔さんの顔が恥ずかしくて見られない。

「亮太がもし、風呂場から果穂を抱き上げてたら、兄妹だろうと嫉妬する所だった…。」

「えっ⁉︎」
翔さんがふとそんな事を言うから、
びっくりして思わず目を合わせる。

「やっとこっち見た。」
そう言って、にっこり笑ってくれる。

「えっ……と、あの、兄ですよ?」

「亮太はある意味俺のライバルだと思ってるけど?果穂の事を1番近くで見て来た人だろ。」

それはそうだけど、お兄ちゃんに嫉妬するなんてしなくていいと思う。

「果穂のいろいろは俺が全部知っていたい。」
そんな独占欲をサラッと言うから顔が真っ赤になってしまう。

「他の奴にそういう可愛い顔見せるなよ。」

…そんな嫉妬深い翔さんだからこそ、
今日あった事をちゃんと伝えなきゃと思う。

きっと時が経てば経つほど言えなくなってしまう…。

翔さんは、そんな私の気持ちを読み取っているのか、取り皿にピザを乗せてちゃんと食べるように見守ってくれてる気がする。