家に着いて果穂を先にお風呂に促す。

その間に、新田に連絡を入れて残してきた仕事の処理をする。

『果穂さん大丈夫でしたか?』

「ちょっと、心配だ。
何となく結婚式の時みたいな動揺が感じられる。…何か嫌な客でもいたのか…」
新田に珍しく弱音を吐く。

『しばらく、キッチンカーを休ませたらいいんじゃ無いです?』

「それが出来れば直ぐにしてる。
そんなに簡単な話じゃない…」

『交渉ごとは百戦錬磨の社長が、
果穂さんにだけは交渉すらしないでお手上げなんですね。』

「果穂と戦うつもりは無い…。
とりあえず続きの仕事、こっちでやっておくから回しといてくれ。」

『了解です。明日はスケジュール通りで大丈夫ですか?』

「夕方の時間帯だけ、事務仕事に変更しといてくれ。」

『了承しました。』

新田に指示を出し電話を切る。
素早くパソコンを立ち上げ、残りの仕事を始める。

果穂を出来るだけやりたいように自由にさせてあげたい。
今まで、きっと過保護な兄にいろいろ制限されて、やりたい事も出来ずに我慢していただろうと思う。

ただ、この大都会東京で彼女の澄んだ綺麗な心を、心無い誰かに傷付けられやしないか、心配で堪らない。

守りたい。彼女を傷付ける全てのものから。

俺の望みはそれだけだ。
 
誰かが彼女を傷付けようとするならば、全力で阻止する。