「好きなんだろ?彼女。」
翔はそう言って顎でくいっと、美咲を指す。
「何、言ってるんだ…可愛い部下の1人に過ぎない。」
そう、優斗は静かに言う。
「そんな事言ってると、自分の幸せを取り逃がすぞ。」
「それに、彼女は翔の信者だ。
推し活に忙しそうだし、お前に勝てる自信は無いよ。」
「その…信者とか言う感覚はよく分からないが…、
遠慮してたら誰かに掻っ攫われるからな。
それが嫌ならさっさと動け。」
「お前が言うと、説得力あるな。」
優斗はただ、笑うしか無い。
そんな男達の会話を、
まったくと言って良いほど気にしない女子2人は、楽しそうにケーキ作りを満喫し、
2時間ほどで一つのミニチュアのウェディングケーキを完成させる。
「可愛いです!!」
「凄くいい感じ!
本番でもこんな風に作れるといいんだけど、ちょっと写真撮ってもいいですか?」
果穂のイメージが形になって、嬉しそうに写真を取り出す。
その可愛い姿を、何気なくガラス越しに翔が写真を撮っていようとはまったく気付いていないだろう。
「この写真、お前にも送ってやる。
有り難く思え。」
わざと上司らしい話し方をして、優斗にニヤッと笑う。
「なんだよその社長ヅラ。」
男2人も笑いながら、それぞれの幸せを噛み締める。
こうしてウェディングケーキは思案し、
何度か試作を重ね、果穂と美咲、
助っ人の優斗の力も借りて、結婚式の前日に無事完成したのだった。