翌朝、
可愛く眠る果穂を見ながら、幸せを噛み締め寝顔を堪能する。

スマホが机で鳴っているのに気付き、
急いで出る。

「もしもし、分かったか?」

『おはようございます。
宮崎社長、相当貴方にライバル心を抱いているようですよ。
まあ、うちから見たらライバルにもなり得ませんけどね。』
朝から辛辣な部下に苦笑いしながら、報告を受ける。

宮崎徹38歳、妻、麻里奈29歳。
三年前に結婚、夫婦仲は冷めているが離婚の兆しは無く、経営するレストランには妻も口を挟む事が多々あるらしい。

妻の実家は開業医と市議会議員を務める父親、一人娘で親の溺愛を受け、曲がった性格にと育ち、欲しいと思った物は必ず手に入れないとすまない、よくある我儘なお嬢様だ。

「で、何で、俺に執着するんだ?」

「この女、どうも最近子供が欲しいと焦っている様で、周囲に相談している様です。」

「だから、何で俺なんだ?」

「貴方のその、優秀な遺伝子が欲しいんじゃ無いですか?」
冷静に、淡々と答える秘書の言葉を、
直ぐに飲み込む事が出来ず呆然とする。

「はっ⁉︎俺の、遺伝子……。」

「貴方の価値はもはや遺伝子にまである様ですよ。
どうしますか?高く売れそうですよ?」
嫌味か、と言うくらい辛辣な言葉を並べたてる秘書を呆れる。

「だからって、俺にどうしろと?」

「気を付けて下さい。男だって、襲われる事もありますから。」

「俺がそんな輩に屈する訳ないだろ。」
その身勝手な女に怒りを覚える。

「新田、何か解決策は無いか探ってくれ。」
翔は、はぁーっと深いため息を吐く。

「一難去って又一難……、ですね。
僕は正直言って、貴方のその容姿と完璧なまでの才能を羨ましくも思っていましたが、
逆に可哀想だと哀れんでもいます。
全力で守りにいきますから、安心して下さい。」

「ありがとう…、と言って良いのか迷うな。」

そんな波乱な結婚式を終え、東京へと帰路に着く。