「旦那に聞けば貴方の動向は何でも分かるの。」
よく分からないが……。
夫婦揃って俺に執着してるって事か?
「で、貴方はわざわざ今日、
ここに来たのはどう言う用件でしょうか?」
本題が見えないから聞くしか無い。
せっかくの果穂との時間を、これ以上無駄にする訳にもいかない。
「私、貴方との夜が忘れられないの。
体のだけの関係で構わないから、
貴方と会う時間が欲しいの。」
さすがの翔も唖然として、しばし言葉を無くす。
「無理です。
この先、妻以外の女性を抱くつもりは無いし、抱きたくも無い。」
そう言い放ち、立ち上がり足速に部屋を出る為ドアに向かう。
そのタイミングで、女は翔に走り寄り後ろから抱きつく。
男なら投げ飛ばす事は簡単だが、さすがに翔も女性に手は出せず。
咄嗟に絡みついた腕を外すだけに止まるが、冷めた目で睨みつけ言い放つ。
「貴方に欲情する事は無い。
俺に勝手に触れるな。不愉快だ。」
翔は苛立ち、バタンと音を立てドアを閉める。
翔が出て行ったドアを見つめ、女は思う。
逃げても無駄よ。
その目で睨まれるとゾクゾクするの。
貴方の遺伝子を持った子供が欲しいのよ。
麻里奈は諦めるつもりは無い。
今まで欲しいと思う物は必ず手に入れてきた。
私が認めたのよ。
翔の優秀な遺伝子が欲しい。
彼以上に優れた人はいるはずが無い。
と、麻里奈は思う。
この先、どんな風に翔に近付こうかと次の策を練る。