いよいよ部活も本格的に始まり、私と冬優花も新しく買ったラケットを手に校庭で素振りをしていた。
一年の指導はレギュラーの先輩が基礎練に当たっている日に日替わりで交代して教えてくれていた。
そして二週間経った土曜日、
レギュラーの先輩は練習試合で他校へ遠征していたので、残った先輩と一年でコートが使えることになったので実際にボールを使って一人一人レシーブの練習をさせてもらえることになった。
いよいよボールが打てるのでワクワクしていた。
今までは素振り練習ばかりで実際にボールを打ったことはなかった。
経験者との差が気になっていたのだが、素振り練習のときに意外と経験者でも軟式のクセがついていて苦労していたようだった。
なので実際にボールを打ってみることで自分の実力というか、向き不向きもわかるんじゃないかと期待していた。
そして練習が始まるとやはり中学で軟式を経験していた者はボールの重さやショットの違いにすぐに対応出来るものは少なかった。
「ほーら、バックハンド逆だよー!」
と言う声がよく聞かれた。
そして冬優花の番が来て彼女がコートに入り先輩からのボールを返したかと思ったら…
勢い余ってフェンスを飛び越し道路を挟んだ向かいの校舎のほうまで飛んでいってしまった。
先輩「齋藤さん力入れすぎー!まず相手コートに返すこと考えてー!」
と、言われていた。
そして私の番が来て先輩の打ったボールをレシーブすると、シングルスラインギリギリに返った。
先輩「守屋さんいいねー♪今のだったらリターンエースだよ」
と、褒められなんだかむず痒かった。
冬優花「茜やるじゃん!」
茜「たまたまだよ」
列に戻りそんな話を冬優花としていると後ろの男子のコートから、
「おぉー!!」
と言う歓声が湧き上がっていた。
女子の順番待ちをしているものたちは一斉に振り向いた。
コートにいたのは一年の樋口勇次だった。
そして周りの男子一年の話し声が聞こえてきて、
男子A「あいつすげえな!あの位置まで下がってラインギリギリにロブ上げるかな?」
男子B「返しただけでもすげえのにな!」
男子一年も私たちと同じようにレシーブの練習をしており彼のプレーに皆が歓声を上げたのだった。
冬優花「あいつ誰?」
茜「中三の二学期の終わりに転校してきたやつだよ」
冬優花「茜知ってんの?」
茜「うん、同じクラスだったけど……転校してきた時期が時期だったからあんまり馴染んでなかったけどね」
冬優花「そうなんだ…」
と、当時のことを少し思い出したぐらいでさほど気にはならなかった。
第七話へつづく…