そして秋風が冷たくなってきた十一月の下旬…
部活で勇次の姿が見られなかった。
部活を休んだことなかったので不思議に思って近くの男子部員に聞いてみた。
すると今日は授業も休んでいたみたいで家の事情でだったらしい。
その時はさほど気にも止めなかったけれど、
次の日もその次の日も勇次は来なかった。
さすがにどうしたのかと思ったが、この時に私は彼の家も電話番号も知らないことに気づいたがどうしようもなくただ時間が過ぎるのを待った。
日曜になれば会えるだろう…
体調が悪くないのなら船岡山へは来るだろうと高をくくっていた。
そして日曜日…
私は少し早く家を出て公園へやってきた。
時間をつぶすために入念にストレッチをしていると彼は何事もなかったかのように現れた。
いつもにも増して言葉数は少なくただ自分に課したメニューを淡々とこなしていた。
ただラリーの時には私へのアドバイスはいつも以上に多かった。
勇次「茜!テイクバックの時に肘があがり過ぎだ!振り遅れるぞ!」
勇次「バックハンドもしっかり両手でトップスピンかけられるようにしろ!」
勇次「左への踏み出しが右より一瞬遅い!相手は必ずそこ狙ってくるぞ、克服しないと!」
私のウィークポイントを的確に指摘してくれる。
今日の勇次はいつもとどこか違った…
休んでいたことと何か関係があるのか?
一通りのメニューを終えてラケットを片付けながら私は聞いてみた。
茜「勇次、学校休んでたじゃん?どうしたの?何か家庭の事情で、て聞いたんだけど…」
勇次「………………」
茜「………あ、ごめん……何か…聞いちゃいけなかったかな?」
勇次「いや………」
茜「言いたくなかったら無理に言わなくてもいいよ…」
勇次「………オレ………」
茜「……何?」
勇次「ここで茜とトレーニング出来るのも今日が最後だ……」
茜「え…………」
第十九話へつづく…