※※※※
どうして気付かなかったんだろう。
亮の優しさに。
あたしへの愛情に。
亮の家に向かって走る。
曲がり角で
ドン、と人にぶつかる。
「すみませ……」
「華」
謝る前に名前を呼ばれて
気付いたら、ギュッと抱きしめられていた。
顔を見なくても分かる。
あたしの好きな亮の香り。
亮の呼吸が荒い。
もしかして探しててくれたの?
冬なのに上着も着ないで……
「……ごめん
華の不安に気付いてやれなくて……甘えてごめん」
抱きしめてくれる亮の腕が、体がかすかに震えている。
それは、寒いから?
それとも……
「頼むから…………なよ」
「えっ、何?」
聞き取れない小さな声。
ねぇ、なんて言ったの?